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からむしのこえ

photo: Daisuke Bundo

映画「からむしのこえ」

からむしのこえ

作品について


草の糸がつなぐ人と人、時間と場所。福島県の昭和村には数百年にわたる営みを受け継ぐ人たちがいます。「からむし」という植物を育て、繊維をとって糸にし、布を織るという暮らし。奥会津の山あいにある小さな村は、厳しくも豊かな自然のなかで、からむしを栽培してきました。その繊維は新潟県に出荷され、最も上質な布として知られる越後上布や小千谷縮の原材料ともなっています。

なぜ、どのようにして受け継がれてきたのか、受け継がれてゆくのか。これらの問いの答えは、からむしにたずさわる人々の無数の行ないや思いのなかにあるのだと思います。『からむしのこえ』は、その一端を紹介するものです。

春夏秋冬、季節の変化に応じて栽培から織りへと進む工程では、長い歳月をかけて洗練された技が生かされ、伝えられます。数ある工程には、各自の作業もあれば仲間との作業もあります。そこでは、言葉にならない技だけではなく、技をささえる言葉も受け継がれてゆきます。また、からむしを育てるなかで、成長の様子をうかがうことを「からむしの声を聞く」と言うこともあるそうです。耳を傾けるような姿勢、耳を澄ませるような関わり方があるということです。

『からむしのこえ』は、からむしによって導かれる人々の行為や、からむしによって語らされる人々の言葉を記録した映画であるともいえます。その喜びやとまどいに触れることで、映画を見る方々が、自分自身の声にも耳を澄ませ、これからの暮らしを考えるきっかけを得ることを願っています。

からむしのこえ

photo: Daisuke Bundo

スケジュール


京都

日時:

2020年3月25日(水)13:00–16:00

会場:

総合地球環境学研究所(地球研)講演室

603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4
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定員:

120名(参加無料・申込不要)

お問い合せ:

明治大学理工学部環境人文学研究室
E-mail: kurata@meiji.ac.jp
Tel: 044-934-7279

主催:

京都精華大学・総合地球環境学研究所

東京(三鷹市)

日時:

2020年2月19日(水)15:00–17:00(開場14:45)

会場:

国際基督教大学 楓寮1F セミナールーム1
(正門から入って進み、チャペルの左手にある建物です。)

181-8585 東京都三鷹市大沢 3-10-2
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定員:

50名(参加無料・申込不要)

プログラム:

14:45 開場

15:00 挨拶

15:05 映画「からむしのこえ」上映

16:45 フリートーク
[ゲスト]
監督:分藤大翼(信州大学准教授)
撮影・録音:春日聡(国立歴史民俗博物館客員准教授)

愛知(常滑市)

日時:

2020年1月26日(日)18:00–21:00(開場17:30、閉店22:30)

会場:

cafe TSUNE ZUNE〈カフェ 常々 2F カフェスペース〉

479-0836 愛知県常滑市栄町 7 丁目 164
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定員:

40名

参加費:

1,000円(陶の森研修生は無料)

プログラム:

17:30 開場 (BAR タイム)

18:00 開演 あいさつ 映画の説明
鞍田 崇(哲学者、明治大学准教授)
分藤大翼(信州大学准教授)

18:15 映画「からむしのこえ」上映

19:45 休憩 (BAR タイム)

20:00 会場も交えて座談会(意見交換)

21:00 終演 フリータイム(BAR タイム)

22:30 閉店

お申し込み:

お問い合わせ:

主催:

トコナメハブトーク製作委員会

福島(会津若松市)

「からむしのこえ―会津のものづくり」

日時:

2020年1月13日(月・祝)13:30–16:45

会場:

福島県立博物館

965-0807 福島県会津若松市城東町1-25
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定員:

200名(参加無料・申込不要)

プログラム:

13:30 主催者挨拶:内田順子(国立歴史民俗博物館准教授)

13:40 上映「からむしのこえ」

15:10 休憩

15:30 座談会「会津のものづくりの未来像」
監督:分藤大翼(信州大学准教授)
撮影・録音:春日聡(国立歴史民俗博物館客員准教授)
協力:鞍田崇(明治大学准教授)

16:30 会場からの声

お問い合せ:

明治大学理工学部環境人文学研究室
E-mail: kurata@meiji.ac.jp
Tel: 044-934-7279

主催:

国立歴史民俗博物館

共催:

福島県立博物館

福島(昭和村)

日時:

2019年12月21日(土)16:00–18:30

会場:

昭和村公民館 ホール

968-0103 福島県大沼郡昭和村大字下中津川住吉415
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プログラム:

16:00 開会

16:10 映画関係者紹介
監督:分藤大翼(信州大学准教授)
撮影・録音:春日聡(国立歴史民俗博物館客員准教授)
題字:華雪(書家)

16:20 映画の説明

16:30 映画上映

18:00 休憩

18:10 意見交換

18:30 閉会

お問い合せ:

昭和村総務課からむし振興室
Tel: 0241-57-2116
Fax: 0241-57-3044
E-mail: karamushi@vill.showa.fukushima.jp

主催:

昭和村

共催:

昭和村教育委員会・昭和村公民館

東京(港区)

映画「からむしのこえ」の上映会と「からむしのお飾り」作り

日時:

2019年12月15日(日)15:30–18:00

会場:

折形デザイン研究所

107-0062 港区南青山 4-17-1
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参加費:

5,000円(材料費、税含む)

お申し込み:

お問い合せ:

折形デザイン研究所
E-mail: lab@origata.com

東京(千代田区)

日時:

2019年12月14日(土)17:30–20:00 (開場 17:10)

会場:

明治大学駿河台キャンパス リバティタワー 1031教室(3階)

101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
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定員:

250名(参加無料・申込不要)

プログラム:

17:10 開場

17:30 主催者挨拶:鞍田 崇(哲学者、明治大学准教授)

17:45 上映「からむしのこえ」

19:30 舞台挨拶
監督:分藤大翼(信州大学准教授)
撮影・録音:春日 聡(国立歴史民俗博物館客員准教授)

19:40 フロアとの意見交換

お問い合せ:

明治大学理工学部環境人文学研究室
E-mail: kurata@meiji.ac.jp
Tel: 044-934-7279

主催:

明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻総合芸術系

秋田

「ものをうみだす 暮らしのゆくえ―福島県昭和村のからむし織文化―」

日時:

2019年10月20日(日)13:30–17:00

会場:

秋田公立美術大学大学院棟1階 G1S

010-1632 秋田県秋田市新屋大川町12−3
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プログラム:

Ⅰ:映画「からむしのこえ」上映

Ⅱ:講演「昭和村のものづくりの未来像」鞍田 崇 (哲学者、明治大学准教授)

Ⅲ:トークセッション「からむし織文化をうみだす暮らしの魅力」
[登壇者]
鞍田 崇
分藤大翼(信州大学准教授)
斉藤洋子(秋田県立博物館工芸部門学芸員)
モデレーター:
唐澤太輔(哲学/文化人類学研究者、秋田公立美術大学准教授)

主催:

秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻

千葉

歴博映像フォーラム 14
「からむしのこえ―福島県昭和村のものづくり―」

日時:

2019年10月19日(土)13:00–16:30

会場:

国立歴史民俗博物館

285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
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プログラム:

Ⅰ:開会の挨拶 久留島 浩(国立歴史民俗博物館館長)

Ⅱ:趣旨説明「からむし文化の記録と継承に果たす研究映像の役割」分藤大翼(信州大学准教授)

Ⅲ:歴博研究映像「からむしのこえ」上映

Ⅳ:講演 1「ものづくりの記録と継承の課題」分藤大翼

Ⅴ:講演 2「会津学における映像の役割」菅家博昭(会津学研究会会長)

Ⅵ:講演 3「昭和村のものづくりの未来像」鞍田 崇(哲学者、明治大学准教授)

Ⅶ:総合討論

Ⅷ:質疑応答

詳細:

主催:

国立歴史民俗博物館

からむしのこえ

photo: Daisuke Bundo

概要

原題:

からむしのこえ

時間:

92分

制作年:

2019年

監督:

分藤大翼

撮影、録音:

春日 聡、分藤大翼

編集:

分藤大翼

整音:

岡部 潔

題字:

華雪

制作:

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

DVDの貸出について


国立歴史民俗博物館により、研究・教育機関、研究者を対象としたDVDの貸出サービスが行われています。貸出は事前申請制で、利用料金は無料となっております。

お問い合せ:

国立歴史民俗博物館管理部博物館事業課資料係
Tel: 043-486-6482
E-mail: daityo@ml.rekihaku.ac.jp

詳細:

からむしのこえ

photo: Daisuke Bundo

プロフィール


分藤大翼(ぶんどう だいすけ)

映像人類学者、信州大学准教授

1972年大阪府生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。1996年よりカメルーン共和国の熱帯雨林地域に暮らすBaka(バカ)という狩猟採集民の調査研究を行なう。2002年より調査集落において記録映画の制作を開始。主な映像作品は『Wo a bele ―もりのなか―』(2005)、『Jengi』(2008)、『jo joko』(2012)、『cassette tape』(2013)。作品はいずれも国内外の映画祭で上映されている。『jo joko』は2013年にセルビア共和国で開催された第22回国際民族学映画祭においてUNESCO南東ヨーロッパ無形文化財保護地域センター特別賞を、2017年にフランスで開催された映画祭Les Rencontres du cinéma documentaireで観客賞を受賞している。『からむしのこえ』(2019年)は国内で制作した最初の作品である。主な共著は『森と人の共存世界』(京都大学学術出版会)、『見る、撮る、魅せるアジア・アフリカ! ―映像人類学の新地平―』(新宿書房)、『フィールド映像術』(古今書院)。『Lexicon 現代人類学』(以文社)他。

春日 聡(かすが あきら)

映像人類学者、音文化研究者、映像・音響作家、国立歴史民俗博物館客員准教授

1970年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部および同美術研究科修士課程にて、日本古来から伝承され近代化した鍛金技法を習得。東京藝術大学美術研究科先端芸術表現領域博士後期課程にて、映像民族誌・宗教人類学を研究。博士論文『《陶酔のテクノロジー》 ―バリ島の祭祀儀礼を中心とした音の民族誌の視座から―』および、記録映像作品『スカラ=ニスカラ ―バリの音と陶酔の共鳴―』により、博士号(美術)を取得(2011年)。
1990年よりこれまで、日本列島各地、バリ島を中心としたインドネシア各地、ネパールなどでフィールドワークを実施。祭祀儀礼や祝祭空間における「可視性、不可視性」や「超越性」をテーマに、民族誌映像とフィールド・レコーディングの可能性を追求しながら、各地特有の無形文化をとりまく歴史的変容と地域的差異を考察するとともに、国際的な比較文化研究をおこなう。奈良県立万葉文化館共同研究の成果を『日本列島の古代における音の超越性 ―祭祀儀礼と神事芸能の諸相から―』(「万葉古代学研究年報 第14号」所収、2016年)として刊行。近著「細男の比較芸能研究 ―おん祭り・アジア南部・九州北部―」(『特集 東アジアの芸能 ―型に現れる永遠・宇宙― 東アジア比較文化研究』18、東アジア比較文化国際会議日本支部、2019年)、「祭祀芸能を記録する ―民族誌映像における音の考察」(『年刊藝能』第25号、藝能学会、2019年)。

昭和村の少女

「母の糸績みをまねる昭和村の少女
(当時まだ二歳の誕生日を迎える前だった。ある織姫さんの娘さんである。)」
(photo: Takashi Kurata、2014年)

昭和村のものづくりの未来像

鞍田 崇(哲学者、明治大学准教授)

「つまり、全くかけ離れた遠い異文化のように見えるかもしれないが、君たちの両親や祖父母にとっては当たり前の暮らしの風景に過ぎない。それは切れているように見えるかもしれないが、実は君たちの内部に繋がり、あるいは内に流れているものに違いない。そういう意味で、外なる異文化ではなく、内なる異文化であるという視点がとても大切なんじゃないか、と。」

―赤坂憲雄

(特別座談会「会津から拓く学びの庭」、
『会津学』vol.1、2005年)

昭和村のものづくりの未来像。

このたびのフォーラムに登壇させていただくことになり、そんなテーマをいただきました。あらためて何を話そうかと考えるなかで、この中にある「未来像」という言葉にひっかかってしまいました。僕なんかが、わかったような顔をして未来について語るよりも、村の方々の協力のもと、分藤大翼さんと春日聡さんの手により映像『からむしのこえ』として留められた昭和村の現在の姿から、ご覧になられたみなさんがそれぞれに「これから」を思い描いていただくのがイチバンではないか、というふうに思われて。

といって、逃げ口上を打とうというのではありません。そうではなく、このたびの映像記録のいちばん大事な点は、決して答えではなく、問いを喚起することにあるというところに思いを致していただきたいのです。

そもそも昭和村のからむしが問いをはらんだいとなみです。昭和村のからむしにはいまだゴールが見えていません。

もちろん現在にいたるまでに昭和村では、からむしに関してさまざまな試みが模索されてきました。およそ半世紀前にさかのぼる「昭和村農業協同組合からむし生産部会」の設立以降に限ってみても、過疎対策としての織物産業化への取り組み、歴史的・文化的価値の検証と文化財指定、国選定保存技術としての体制づくり、織姫制度の導入、からむし工芸博物館・織姫交流館の設置、伝統的工芸品指定等、実に多くのアクションが次々と手がけられてきました。でも、その間、厳しい現状を打破することはありませんでした。ゴールなんて一度たりとも見えたことなどなかったとすら言えるかもしれません。にもかかわらず、その取り組みは倦むことなく継承されてきました。なぜなのでしょうか。

なぜ昭和村では(あえて言わせていただくなら)ゴールのないからむしを絶やすことなく受け継ぎ、いまなお多くの努力がそのために払われているのでしょうか。それこそ安易に答えを出すのは憚られます。が、あえて言います。ゴールがないからこそ、からむしのいとなみは受け継がれ続けてきたのだ、と。

昭和村のからむしにおいては、ゴールに至ることよりも、プロセスが肝要です。ただひたすらに。もちろん、個々の生産者の方々のいとなみに関して言えば、少しでもよい繊維を、少しでもよい糸を、少しでもよい織りをという目標があってこそのいとなみではあるでしょう。また、最高級の織物である越後上布・小千谷縮のための原料生産という使命感もあるでしょう。しかしながら、決して誰も安易にゴールに行こうとはしない。行けるなんて思ってもいない。でも、ゴールに行けないから意味がないなんてことはまるでなく、ひとつひとつのプロセス、そこでの時間の充実こそが、からむしに携わるひとびとを励まし、勇気づけ、彼らに他のなにものにも代えがたい誇りとやりがいをもたらしているのではないでしょうか。

「からむしだけはなくすなよ」、「からむしだけは絶やすなよ」。映像『からむしのこえ』の冒頭にあるフレーズです。昭和村のからむしについて、村の方々が親から子へ、子から孫へと言い慣わしてきたとされる、これらのフレーズに託された思いの深さ。すべてはここに言い尽くされているように思われます。儲かるからとか、名誉であるからとか、歴史があるからとか、何かそういうわかりやすい理由で説明できるものではない。ただひたすらに、プロセスとして、「からむしだけはなくすなよ」。

顧みれば、逆に、現代社会に生きる僕たちはつねにゴールに取り囲まれています。なかでも商品というゴールに。なんの不便もありません。インターネットの普及により、ワンクリックするだけで、自分の部屋から出ずとも商品を入手できます。本でも、衣服でも、食べものでも、電化製品でも、何でも。そうしてなんら不自由なく生きていくことができます。便利です。商品だけじゃない、情報というゴールもあります。わからないことがあれば、すぐにネットで検索できる。検索すれば、それらしい答えを見つけることができる。SNSで発信すれば、すぐに「いいね!」のリアクションがある。あっという間にゴールにたどりつける。なにも難しいことはない。そういう状態にすっかり慣れきってしまっています。

でもそうした生活を過ごすなかで、何かが足りないという気分が募ってくる。

足りないのは体験です。生活を自らいとなんでいるという体験。生きているという実感をもたらす体験。あるいはリアリティと言ってもいいのかもしれません。明らかにいまここに存在しているのに、どこかすべてが他人事のよう。リアルじゃない。ゴールだけの生活では、じつは満たされないのが人間です。

個々人の生活のあり方だけの問題ではありません。1990年代初頭以降、日本社会は「ポスト工業化社会(脱工業化社会)」となりました。ありていにいえば、もはや生産・製造業は社会の主役ではない。主役は流通であり、サービス業です。ますます効率化が図られる中で、買い物のあり方も変わりました。個人商店は閉じられ、代わって大規模スーパーかコンビニでするものとなりました。ものづくりはもとより、専門的な仕事のいとなみにふれる機会はすっかり減りました。目にするのは、ただただゴールの集積ばかり。気がつくと、いまでは社会もまた、どこかリアリティが希薄で、よそよそしくすらあります。

生活も社会もそのような状況にあるなかで、昭和村のからむしは、僕たちにプロセスをないがしろにしないからこそのリアリティを思い出させてくれます。ただ、ここで気をつけなければいけないのは、昭和村とて決してパーフェクトではないということです。現実のからむしをめぐる村の取り組みは、世間的なゴール追求の傾向に即すような側面もあったでしょう。20世紀という時代はこの山村をもすでに激変させてしまいました。

しかしながら、ともするとそのまま袋小路に陥りかねなかった昭和村のからむしがそうならなかった。なぜか。そこに人がいたからです。「からむしだけはなくすなよ」を耳にして育った村の方々がいたからです。さらには、四半世紀前に導入された織姫制度のもと、村にやってきた多くの「織姫さん」たちがいたからです。彼ら彼女らの、いや、からむしに直接携わることのない人たちも含めて、ここで暮らす人々のひたむきな姿勢があればこその昭和村のからむしでした。

であるがゆえに、昭和村という空間、そこで暮らすひとたちのほんの些細な仕草からさえも、きっとみなさん自身の中に潜んでいる何かを見出せるはずだと思うのです。そうして、昭和村のからむし、その未来を考えることは、私たちひとりひとりのこれからを考えることにつながってくると思うのです。

答えではなく、問いを喚起することが大事といいながら、しゃべりすぎてしまったようです。ここに記したことは、あくまで僕の個人的な見解。映像『からむしのこえ』を通して喚起される問いの内容は、みなさんひとりひとりが抱かれるままに、様々であってよいと思います。なかなか言葉にしがたく、問いというよりも、ただ心がモヤモヤとするとしか言えないという人もいるかもしれません。それでも全然かまいません。そのモヤモヤの先にはきっと、探られるべき未来があるはずです。

*この文章は、映画「からむしのこえ」完成記念として開催された歴博フォーラム14(国立歴史民俗博物館、2019年10月19日)のパンフレットに寄稿したものです。

からむしのこえ

photo: Daisuke Bundo

からむしについて


からむし(Boehmeria nivea var. nipononivea)はイラクサ科の多年草で、苧麻(ちょま)、青苧(あおそ)とも呼ばれる。国内のからむしは中国大陸から伝わったとされており、縄文時代から利用されていたことが分かっている。
昭和村のからむし栽培は、水はけの良い肥えた畑に、根から取り出した苗を植えるところから始まる。3年目以降、からむしは5月から7月にかけて2メートル近くにまで成長する。刈り取ったからむしの葉を落とし、茎の表皮と内側の木質部を取り除くことで、その間の靭皮(じんぴ)から繊維をとることができる。その繊維は、丈夫なうえに吸水性が高く乾きやすい性質を持っており、衣類や工芸品の素材として利用されている。

昭和村について


昭和村は福島県西部の会津地方に位置する。1000メートル級の山々に囲まれており、村の面積の8割はブナ林(落葉広葉樹林)となっている。また、冬期の積雪は2メートルに達することもあり、特別豪雪地帯に指定されている。野尻川・玉川・滝谷川の流域、標高400~800メートルの平坦地に10の集落があり、人口は1264人(2019年8月1日現在)。高齢化率が50パーセントをこえる過疎地域でもある。基幹産業は農業で、夏期の冷涼な気候に適したカスミソウの栽培は、夏秋期の栽培面積において全国1位の規模となっている。

詳細はこちら

昭和村のからむし栽培


昭和村のからむし栽培について、文書によって確認することができる最古のものは、1756年(江戸時代中頃)に記された「中向からむし・青苧畑証文」(福島県立博物館蔵)である。また、1858年に記された『青苧仕法書上』(喜多方市立図書館所蔵)からは、当時の栽培方法が現在のものと大きく変わらないことがうかがえる。つまり昭和村では、この160年に渡って栽培の方法が受け継がれてきたといえる。
戦前における養蚕の盛況、戦後の食糧難に応じた食料栽培への転換といった時期を経て、化学繊維の普及と着物需要の減少にともなって、からむしの栽培は下火になってゆく。このような状況を受けて、1971年に生産技術の保存を目的に「昭和村農業協同組合からむし生産部会」が設立され、1981年には「からむし織技術保存会」が作られる。そして、1986年には第1回からむしフェアが開催され(2019年に第34回が開催)、この年から1988年にかけて、民族文化映像研究所による記録映画『からむしと麻』が制作される。
1985年にいたる20年の間に、からむしの生産高が四分の一にまで落ち込んだことを受けて、1990年に「昭和村からむし生産技術保存協会」が発足。1991年に「からむし生産・苧引き」が選定保存技術に選定される。こうして昭和村は、今日に至るまで小千谷縮・越後上布(重要無形文化財、ユネスコの無形文化遺産)の原材料を提供し続けている。また、1994年に始まった「からむし織体験生」事業をはじめ、独自の取り組みを重ねており、近年では2017年に経済産業省から「伝統的工芸品」として指定を受けるなど高く評価されている。

「からむし織体験生『織姫・彦星』」事業


全国から希望者を募り、昭和村の暮らしとからむし文化を体験的に学んでもらうことで、村内外において、からむしの知名度を上げることを目的として、1994年に「からむし織体験生」事業が始まった。毎年数名の体験生を募り、1年間の生活を補助しつつ、栽培から織にいたる工程と四季折々の村の生活を学ぶ。修了後、さらにからむしについて学び、技術を高めたい人には、最長3年のあいだ手当が支給される「からむし織研修生制度」が設けられている。2019年に26期生を迎えている本事業を通じて、これまでに通算120名ほどの修了生が誕生し、そのうちの30名ほどが現在も村に滞在している。「織姫・彦星」と呼ばれる人々のおかげで、村の内外の人々の認識や、からむし文化の状況は「変わった」と言われている。村内外の変化を、これからどのように繋いでいくのかが課題となっている。

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からむし栽培・織の作業工程の概略


からむしのこえ

[参考文献]

  • 『苧 博物館シリーズ1』 菅家博昭、大久保裕美著/からむし工芸博物館/2001年
  • 『苧からむし』 菅家博昭著/農産漁村文化協会/2018年
  • 『別冊 会津学 暮らしと繊維植物』 菅家博昭著/奥会津書房/2018年
  • 『からむし栽培の手引き 副読本』 舟木由貴子、塩谷奈津紀、吉田有子著/昭和村からむし生産技術保存協会/2016年
  • 『昭和村のからむしはなぜ美しい からむし畑 博物館シリーズ14』 平田尚子著/からむし工芸博物館/2011年
  • 『ハタの廸』 大久保裕美著/昭和村からむし織後継者育成事業実行委員会/2004年
  • 『からむしの学校』 昭和村総務課企画係/2014年

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